今こそ読みたい!『はだしのゲン』がすごい作品の理由とは?

はだしのゲン すごいマンガ

皆さんこんにちは、今回は『はだしのゲン』に関するあらすじをはじめ、本作のどういうところが凄いか・魅力的かについてご紹介したいと思います。

本作『はだしのゲン』は、1973年から1987年にかけて『別冊少年ジャンプ』に長期連載された自叙伝的漫画とされ、その後は実写映画やアニメなどの各メディア方面への提供もなされつつ、現代では主に強烈な印象を持つ〝人間ドラマ〟〝戦争映画〟として知られています。

ストーリーは主に、作者である中沢啓治さんの実体験をもとにして描かれ、その被爆体験を赤裸々に綴った実験的な漫画ともなります。

ぜひそのリアリティ溢れる感動をご堪能下さい!

『はだしのゲン』のあらすじ

昭和20年の広島を舞台に、主人公・中岡ゲン一家を中心にする形で、人々が戦時中・戦後を懸命に生き抜く姿が描かれます。

ストーリー開始時の中岡ゲンは小学生で、昭和20年8月6日の朝8時15分、学校へ行く途中に被爆し、その瞬間に〝広島の時間が止まった〟と(作中でも)表現されているように、周囲の状況が地獄絵図のように移り変わってしまいます。

被爆によってゲンは父親、姉、弟を亡くし、まだお腹に赤ちゃんを宿す母親と2人だけの壮絶な生活を強いられます。

それからさまざまな人間ドラマが描かれ始め、人とのふれ合い・人の温かさと冷たさ・当時の生活がどんなものだったかをリアルに再現します。

ゲンはやがて青年から大人になり、その後の人生をさらに謳歌しようと「絵の勉強」をする事を試みながら、上京していくシーンで幕引きします。

『はだしのゲン』のココがすごい!

本作『はだしのゲン』の凄さは、まず〝実際に起きた出来事〟を目の当たりにさせられるリアリズムにあります。

架空の漫画世界に留まらず、〝昔に本当に起きた出来事〟を読者へ投げかけ、「今の世界は果たしてこれでいいのか?」「今も昔も同じような権力社会で危ないんじゃないか?」などの個別の思惑を植え付けられることでしょう。

漫画が漫画で終わらず、その内容を読んだことでさらに価値観・考え方・主義までを転換させられそうになるリアリズムの追究には、果たして多くの読者が共感させられます。

戦時中の人々の思想がどんなものだったか、その日常の生活模様はどんなものだったかを踏まえ、世の中の移り変わりを想う上での貴重な戒めのようなものが示されます。

とくに戦時中と戦後の人々の物の考え方や表情が、対照的に描かれる点に注目下さい。

おそらく作者はこの点をかなり強調した描き方をしたと想わされ、その内容・あり方は真逆の形を採って示されています。

本来なら包み隠す内容も赤裸々に描写する

「普通の漫画ならここまでは描かないだろう」とする微妙な描写をまったく包み隠す事なく、さらにリアルな形で描き尽くすところに本作の魅力があります。
・戦時中で実際に見られた軍隊や予科練隊での人権を無視した厳しい戒律(その戒律の下でどれだけの人が亡くなったかという事実)
・戦時下で自由な主義思想を謳う事がどれだけ勇気の要る事で、それによってどれだけ多くの人が苦しめられ、拷問にかけられ、命を落としていったか
・戦後に見られた人の温かさと冷たさ(その背景に隠された極めて厳しい生活の実態)
・子供を殺害する描写
・妊婦のお腹を裂いて中から赤ちゃんを取り出す描写
・女性器に一升瓶を突き刺す描写(シルエット)
・動物を殺害する描写
・被爆によってケロイドを持つ人達に投げ掛けられた周囲からの心無い言動
・被爆によって抱えた原爆症による恐怖と悲惨の描写

この他にもあらゆる壮絶な内容が、実際に起きた出来事として描かれます。

当時に生きた日本人がどれだけ悲惨な生活を強いられたかをベースに取る上で、そこで展開される人間ドラマがいかに悲惨で野蛮だったかという事実を綴り、それでも希望を持とうと懸命に努力していた人々のドラマが、何の隔たりも無く赤裸々に示されます。
(これを受けて発禁処分になった程、その内容描写は凄まじいものでした。)

戦争への全否定をはっきり説いている

多くの戦記モノ漫画では、戦争を勇ましく描いたり、ヒーローを主役に立てて戦争を美化してみたり、また凄惨な描写を取り入れながらも人々の生活模様に〝一筋の光〟を差し込ませ、なんとか未来に向けて明るく立ち直ろうとする経過が描かれます。

しかし本作『はだしのゲン』では確かに〝希望の光〟を根強く描いてはいますが、それより大きな背景として、「いつまた戦争が起こり、このような悲惨な世情になるかわからない」、「人は喉元過ぎれば熱さを忘れるように、また戦争へ多くの人を駆り立てていく生き物だ」といったやや厳しい批判のようなものが込められます。

ストーリー後半で、ゲンと隆太(ゲンが戦後すぐの焼け野原で出会った弟そっくりの少年)がチャップリンの映画(『独裁者』)を観、ゲンがその感想を正直に言うシーンがあります。

「『街中で人を殺せば殺人者として死刑になって罰せられるが、戦場へ行って敵の人間を多く殺すほど勲章をもらって英雄になる』と言うたんじゃ。戦争という理由さえつけばいくらでも人を殺してもええとは、本当におかしなことじゃ。」

この前後のシーンでも、ゲンや、ゲンが懇意にしていた学校の先生達と一緒になって、「いつまた戦争に向かって世情が進んで行くかわからないから、国民は全員でそうならないように見張っていなければならない」とスローガンを掲げ、街中をデモ行進していく様子が描かれます。

このように本作では「戦争は絶対に駄目」という主張を全面的に打ち出し、戦争へ向けて世界を行進させてはならないという事を切実に訴えかけます。

「問題作」とされながらも人に読まれ続けている

『はだしのゲン』は以前、学級文庫に取り入れられ、学校や図書館で多くの子供達がすぐ読めるようにしていました。

しかしPTAや民間の特定団体などによって発禁処分に追い込まれた時期もあり、その作風・内容描写のスタンスが批判的に見られた経過もあります。

そのような背景を持ちつつも、本作は現在でも非常に多くの人に読まれ続け、現代の小学校・中学校などでは「平和学習教育時間」に使われています。

さらには世界平和を訴えかける文化教育のサンプルテキストとして採用されており、まるで〝不滅の一作〟として認められるものです。

つまり、それだけ内容描写にインパクトがありつつも、「世界平和を大切にする一貫性」が認められ、その点への評価が莫大的なものであることを物語っています。

まとめ

今回は『はだしのゲン』のみどころ・魅力をかいつまんだ形でご紹介しました。

本作では「戦後に起きた実際の出来事」を描いており、フィクションでありながらノンフィクションの要素を多分に含めたテイスト・スタイルになっています。

その分だけ多くの読者はストレートに世界観の訴えどころを知る事が出来、さらに平和に対する思い、いつまた戦争が起こるかわからない世情の不安なども、同時に吟味させられるでしょう。

中には本作のストレート過ぎる描写によってトラウマを受けてしまった児童も多く居たということですが、裏返せばそれは「それだけ戦時中の人々は惨い事・ひどい事をし続けて来たんだ」という歴史を反省させられる上、平和を実現するための教材・戦争の悲惨をしっかり学ぶ教材になる証明とも受け止められます。

まだ読んだ事のない方はぜひ一度手に取ってみて、本作に彩られた本当の素晴らしさを体感してみて下さい。

作者名 中沢啓治
出版社 中央公論新社
掲載誌・レーベル 中公文庫コミック版
ジャンル 少年マンガ

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